高橋 従来とは根本的に勉強の仕方を変えて、手ごたえがありました。漠然とですが、将来は新しい教育法を作れたらいいなと考えています。
有馬 普通の学習塾とはどのように違うのでしょうか。
高橋 普通は生徒自身に解決策を探らせます。でも、この方法が合う人もいれば、合わない人もいる。悩んでいる生徒に対して、それでも考えろ、とやってしまうと「自分にはできないんだ」と負の感情が生まれてしまう。自分の塾に来る生徒はみんなマイナスのイメージを抱えているので、まずはそれを払拭しなければなりません。
有馬 確かに、わからないのに考えろ、と言われるのは経験上しんどかったです(笑)すると各生徒が持っているマイナスのイメージに対応した学習法が重要になる、と。
高橋 そうです。塾では生徒の学習状況を把握しやすいように管理システムを作りました。
有馬 前職で培ったシステムエンジニアのスキルが活きていますね。
高橋 他にも、最初は生徒が持つカードを読み込むと入退出を保護者にメールで知らせるというシステムはあったのですが、全部とっぱらいました。ある時、保護者からメールが来ないと言われ、調べるとカードを読ませていない生徒が沢山いることがわかった。そこでカードを使わずに保護者にメールを送るようにシステムを直しました。また、だんだんやっていく中で生徒の学習状況も送ってしまおうと思ったのです。
有馬 なるほど、単純に送っていたメールに付加価値を持たせた。保護者は教育面でも安心できますよね。
高橋 これを始めて以来、保護者から「学習状況がわかってありがたい」という返信が多く来るんです。現在、運用してまだ3ヶ月程度ですが、これが主役になっています。将来的には現在の2倍の生徒分、送信できるようになりたいと考えています。
有馬 私は教育実習の時、教育とは「導く」ことだというのが記憶に残っています。また、山本五十六海軍大将の言葉で「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という名言も好きだったりします。社会で働いていて感じるのは、上司部下、先輩後輩の関係で教えるタイミングが必ず来る、皆教師の立場になるのに、教えるという意識を持っている人が少ない。ある意味鍛えるためなのかもしれませんが、もっと意識したらよい組織になるのに…と思うことが少なくありません。
高橋 その意見には賛同します。それでは組織の中の雰囲気も悪いですよね。人に教える気がない、これは元をたどっていくと学校教育で往々にして起こっています。
例えば、以前、あまり勉強の好きでない生徒を教えていた時に、学校の先生から「この宿題をやれ」と命令口調で言われたそうです。それで「やれって言われてやりたいと思う?」と聞いたら「やりたくないです」って言うんです。それは当然で、頭ごなしに言われたらやりたくないじゃないですか(笑)その後にその宿題を見てみたら、よく考えられている内容だったので「素晴らしい問題だから、これはやってみた方が良いですよ」と生徒に伝えたら目を輝かせて「やります」と言ってやり始めました。
有馬 同じ宿題なのに(笑)
高橋 そうなんです(笑)その子は能力を持っているのに、引き出せていない。これは学校が本当の意味で「やって欲しい」と思っていないのではないか、教えようとしていないのではないか。その結果が、社会にまで及んでいるのではないかと考えています。
有馬 なるほど。管理職以上の方々はすごく仕事の出来る人が多いですが、「自分はできるのになんで君はできないの」ということを暗に言われることも多いです。あと、よくあるのは「俺はこうやるんだ」と押し付けるタイプ。そのような方々を見て、教育を受ける経験は学校であるだろうけど、教える方の経験が足りないのではないか、と思っていたのですが、そもそも教育を受ける時に問題があったということですか。
高橋 私は生徒に「教えてやろう」とは思っていません。「解決できたら」という気持ちです。生徒の頭の中でどのような化学変化が起きているかを気にしています。また、立場上、先生と呼ばれていますが、1ミリたりとも自分を先生と思っていません。ただ事業を拡大しようとたくらむ一経営者です。
有馬 どこにいる先生よりも立派に見えますが(笑)
高橋 周りからそのように見られるのなら、それには乗っからせてもらおうとは思います(笑)